日语阅读-过路妖魔
2021-11-21 09:23 | 编辑:川外外语培训中心 来自:未知その笑い声をきくと、小林君は、ハッとして、思わず逃げだしそうになりました。骸骨が、いまにもとびかかってきて、小林君をこわきにかかえ、どこかへ、つれさるのではないかと、思ったからです。
「ワハハハハ……、こわいか。ふるえているじゃないか。」
四十面相の骸骨が、ユラリと一歩、小林君のほうに近づいて、しわがれ声で言いました。
「こわいもんか。ただ、きみにつかまらないように、用心しているだけさ。」
小林少年もまけてはいません。
「ハハハ……、やっぱりこわいんじゃないか。だが、安心したまえ。なにもしやしないよ。きみはかわいいからね。きみがおれを尾行したり、ふいにおれの前に、あらわれたりするのが、じつにたのしいのだよ。きみはおれの秘密を、なんでも見やぶってしまうからね。あいてにとって、じつにゆかいなんだよ。」
「フフン、それで、きみは、これからどうするつもりなの。ぼくは、どこまでも、しゅうねんぶかく、きみにつきまとってやるよ」
「おもしろい。そこがすきなんだよ。だが、今夜は、これでおわかれだ。きみは、もう、おれを尾行することは、できないのだよ。」
「じゃあ、逃げるのかい。」
「フフフフ……、まあ、逃げるのだろうね。しかし、また、じきにあえるよ。きみはきっと、おれの前にあらわれるからね。」
「で、どうして、逃げるの?」
「きいてごらん。なんだか音がしているねえ。エンジンの音のようだね。遠くのほうから、だんだん近づいてくる。ホラね。」
しずまりかえった夜の空気をふるわせて、かすかに自動車の近づいてくる音が、聞こえています。小林君は、とっさに、その意味をさとりました。しかし、どうすることもできません。金色の骸骨は、サッと身をひるがえして、もう走りだしていました。小林君も、思わず、そのあとを追いましたが、遠くのひかりをうけて、ときどき、キラッキラッと光る金色の骸骨は、林の中をくぐりぬけて、うらのコンクリート塀に近づき、いきなり、パッと、とびあがったとみるまに、たちまち、塀の頂上に、よじのぼっていました。
からだの小さい小林君には、とても、そのまねはできません。やっと塀にとびついて、ひじょうな苦心をして、塀の上に顔をだしたときには、四十面相は、もう、そとがわへとびおりていたのです。
それは、じつに、みごとな曲芸でした。小林君は、そのはなれわざを見て、敵ながら、すっかり感心してしまったほどです。
一台のオープン・カー(屋根のない自動車)が、むこうの町かどから、矢のように走ってきました。そして、それが四十面相ののぼりついた塀の下を、通りすぎたとき、金色の骸骨のからだが、サーッと空中におどり、アッと思うまに、自動車の座席の中へおちていきました。つまり、四十面相は塀の上から、走っている自動車に、とびのったのです。じつに、あざやかな演技でした。
自動車は、すこしも速度をゆるめず、そのまま、べつの町かどをまがって、消えていきました。むろん、まえもって、うちあわせてあったのでしょう。その自動車の運転手は、四十面相の部下にきまっています。
まるで通り魔のようなできごとでした。アッというまに、今までそこにいた骸骨も、自動車も、見えなくなり、あとには、死にたえたような、夜のしずけさがあるばかりでした。
小林君は、ゆっくりと、塀のそとへおりて、自動車の消えさったほうをながめながら立っていました。敵のためにみごとに、だしぬかれたのです。では、小林君はまけたのでしょうか。いや、どうも、そうではなさそうです。そのしょうこに、小林君は、ニヤニヤ笑っていたのです。笑いながら、こんなひとりごとを言っていたのです。
「四十面相君、気のどくだが、きみは、逃げられないんだよ。このつぎの金曜日には、きみはどうしても、ここへ来ないわけにはいかないんだ。勝負はそのときだよ。こんどこそ、ぼくのおくの手をだして、アッと言わせてやるからね。ああ、金曜日がまちどおしいなあ。」
小林君は、そう言って、またニヤリと、ふしぎな笑いをもらすのでした。
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